2013年7月1日月曜日

第16回 質実剛健講座レポート

2013年6月21日。台風の金曜日。
地質学者の吉田鎮雄先生による講座が行われました。
タイトルは「原発ゴミの地層処分と日本の地質」です。

吉田先生は、東大、名大、静大とで教鞭をとりながら地質学の研究をされてきた方です。
311後も、東電設計と電力中央研究所で原発の処分問題について意見を求められました。

前回の柳沢先生もずっと教師をされていたいわば「講座のプロ」でしたが、
今回の吉田先生も永らく大学の講座をされていたということで、講座内容はたいへん分かりやすく、ジョークもあり、ふいに飛ぶ質問にもしっかり答えられるなど、なめらかに時が流れて行きました。

原発の地層処理という、よくわからないこそ不安がかきたてられてしまい、でもはっきりと答えをだれも教えてくれない、教えてくれないから余計に不安が増す問題について、東電の技術分野の専門家のトップとしてご活躍されていた方に直接うかがうことができる貴重な機会となりました。

さて、今回の講座メモです。
-----
目次
・地層処分とは
・日本列島の地質
・日本の岩石と地層処分への適応性
・火山活動
・地殻変動
・日本列島周辺の3千万年前以降の地体構造
・結論

・地層処分とは
 ・原発ゴミとは=放射能レベルの高い廃液をガラスと混合し、
         分厚いステンレス製のキャニスターに入れて固めたもの
 ・地層処分とは=地下300m以深に埋めること
 現時点で、原発ゴミの量は、年間約1300本ずつ発生している
 IAEAの規定で国内処分が決められている。

 ・「地層処分」とは、「geological disposal」を和訳したものであるが、
  本来ならば「地質学的処分」と訳されるべきであり、
  それは「地質学的安定性を利用した処分」という意味を含む。
   ↓
  地質学的安定性をもつ地層とは、10万年〜数億年にわたり変化しない地層。
  これは鉱山・トンネル・ボーリングで確認済み
   ↓
  日本でも原発ゴミを安全に地層処分できる。

・日本列島の地質
  日本がいまの配置になったのは、1400万年前くらい。
  基盤岩は、堆積岩、火成岩、変成岩から成る。
・日本の岩石と地層処分への適応性
  基盤岩のなかで、透水性が低いものが地層処分に適した性質を持つ。
・火山活動
  地層処分は、火山中心から20km程度離す必要がある
・地殻変動
  プレートシステムが変化しなければ、
  少なくとも将来10万年程度の期間の地表近くの断層活動は、
  日本列島の地表近くの活断層に沿って起こると推測されている。
   ↓
  地震が深いところで起こっても、
  地層処分場が置かれる深さには達しない。

  日本列島の隆起の速度は一般的に50m/10万年よりも小さい。
  ↓
  将来10万年程度の期間に地層処分場に致命的な損傷をもたらすような量に達することはない。(断層、褶曲、隆起などのゆがみ、変位が)

・日本列島周辺の3千万年前以降の地体構造
  日本がいまの地体構造になったのは、1400万年前くらい。
  ↓
  将来10万年〜数10万年程度はほとんど変化しないと予測できる。

・結論
  地質学的に言えば、日本列島は「活発は変動帯」であり、多くの火山・活断層・地震がある。
  しかし「活動的」か「非活動的」かは考慮するタイムスパンによって異なる。
  将来1億年のタイムスパン---日本列島は大山脈に成長しているか、学に大洋深く沈んでいる可能性がある。
  将来10万年のタイムスパン--日本列島の輪郭・地形・地質構造はほとんど変化していないだろう

↓↓↓
地質学・地球科学の理論とデータは、原発ゴミを安全に地層処分できる場所が日本各所に存在していることを明示。
------
だいぶはしょりましたので意味が通らないところなどありましたら、
ご連絡くださると幸いです。

原発はできるだけ早く廃止すべき、でも突然止めるにはいろいろな問題があり難しい、
と語られた吉田先生。
新エネルギーや代替エネルギーが安定して供給されるようになるため、今私たちはなるべく石炭石油を次の世代のために温存することをしなければならないと結びました。

いや、正確には結んだ後に、日本各地の美しい地層のスライドがありました。
それはそれでまたべつの講座を開かれてもいいのでは、と興味をひかれました。

ありがとうございました。