朝晩の風が幾分ひんやりしてきました。
37回目の質実講座、タイトルは『地球環境を広い視点で考える〜「公害」から「地球温暖化」まで〜』
地球環境戦略研究機関(IGES)参与であり、日本国連環境計画(UNEP)協会顧問でいらっしゃる平石尹彦(たかひこ)先生による講座が行われました。
※平石先生が何度か「僕は質実剛健じゃなくて質実」とおっしゃっていましたので反映しております。
環境問題は、自分たちと供、孫の世代に続く解決していかなければならないテーマということで、今回はいつも以上に参加の皆様の熱意が高まる講座となりました。
卒業してもう学生ではなくなっても真面目に授業に取り込む姿勢には毎度関心してしまいます。
以下、講座レポートです。
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アジェンダ
1. 日本が経験した公害と対策
2. 気候変動に関する科学(IPCC)
3. 温暖化対策の国際的動き(UNFCCなど)
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1. 日本が経験した公害と対策
江戸時代から始まり、主体は第二次大戦後の経済復旧に伴う公害のお話。
「環境問題も公害も被害者はいつも弱者や貧しい人」という言葉が印象的でした。
▼大気汚染問題
・1960年代から深刻化(工業都市、大都市)
・今でいう「PM2.5」の問題。当時は「浮遊粒子状物質」と呼んだ
→合わせて「硫黄酸化物(SOx」「窒素酸化物(NOx)」も問題となり、現在中国では引き続き深刻だが日本のマスコミはこれをあまり報道しない
→日本でも認定患者が10万人レベルに達したので中国では100万人以上となるだろう
・日本では政府主体というよりは、地方自治体・住民の活動が先行して対策が進んだ
・1970年代前半の「ガソリン無鉛化」は極めて先進的で、日本は今でも大気中に鉛がない珍しい国であり続けている
▼水俣病解決の遅れ
発生から公式報告までに15年ほどあったとされ、もっと早く解決できたのではないかとされる
・当初は"奇病"とされ差別の問題もあった
・原因として「水銀」があげられてからも科学・非科学問わず他の仮説が多数あげられて学説争いの場となってしまった
・「有機水銀による健康被害」と厚生省の見解が出たのは1968年
→有機水銀による健康影響は、労働災害以外はないとされていた
有機水銀が化学合成プロセスで生成・排出されていると判っていなかった
環境中の超低濃度の有機水銀を計測する手段がなかった
→企業防衛の本能
対応策選択の誤り
→長期間患者が放置された
→同種の事件が再発した
▼日本の公害対策の特徴
・独自の「環境基準」がある
・大気・水質・土壌・騒音に関わる環境基準がある
・ダイオキシンについては、環境媒体を横断した環境基準がある
・これらの目標等を達成するため多くの政策が策定・実施された
・日本の多くの公害対策は、地方自治体や地域住民による問題提起が先行。
また、国際的にみても先進的な民間企業等による汚染対策技術の開発・実施があったことは重要な要素であった
☆非常にユニーク!!
1973年「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(化審法)が制定
→事前評価することを規定したところがユニーク!
「自分が無罪と思うならばそれを立証してくださいよ」という未然に聞く法律
「分解」「蓄積」「毒性」の3条件すべてがクロだとダメ
さて、ここまでで12スライド。
全体の6分の1です。
残りはペースをあげてまいります!!
2. 気候変動に関する科学(IPCC)
皆さん、「IPCC」はご存知でしょうか?
国連気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change)の略。
IPCCは、実際に調査研究するのではなく世界中の論文をレビューする活動をしています。
例えば「温暖化」について多数発表されている論文を精査して紹介する、など。
そのレポートに対して提案したり提議したりすることはないが、1件1件読み、(「温暖化は実はありません」というような)偏った主張のものは除いていくなど膨大な作業量がありもちろん読解力も求められる。
こうしてIPCCには世界中の科学者の意見が集まり分け隔てなく提供されています。
1995年の報告書は、京都会議のベースになったし、2001年の報告書はブッシュjr.が側近に「あの報告書は信用に足りるのか」と問うて「執筆者の多くがアメリカ人なので信頼できます」と答えたとか。
◆2007年ノーベル平和賞受賞◆
このような活動から、IPCCはアルベルト・ゴア元米国副大統領とともに、ノーベル平和賞を授与されました。
※人為的な気候変動に関する知識を確立し、普及し、かかる気候変動に対処するため の対策の基盤を設定した努力に対して
▼現在観測されている気候変動
・気候システムの温暖化…人間の影響であることは明白
・1950年代以降、数十年から数千年の範囲で先例がないレベルで温度上昇
・大気・海洋の温暖化、雪氷の減少、海面上昇、温暖化ガスの増加も観測
↓
その最大原因は、
・大気中に排出される二酸化炭素(1750年以降に急激上昇)
→海洋酸性化の原因にも
↓
将来予想
・対策しないままだと平均温度は39度。対策すれば32度。人間の努力次第。
・グリーンランドの氷が溶ける速度が意外と早いかも。なんとか避けなければいけない。
↓
抑制
・温度上昇を2℃以下に抑える手段
=2050年までに40-70%の温暖化ガス排出削減
=世紀末までのnearゼロエミッションの達成
↓
技術・経済・社会・組織での課題を含む
↓
期待される技術
・CCS(炭酸ガス捕捉・貯蔵)
・BCCS(バイオマスエネルギー含む)
・大規模植林
⇒実現には困難が予見される
高いレベルの削減でも、経済成長への影響は大きい
☆☆☆今のまま二酸化炭素を出し続けると、30年後、2℃の上昇はすぐ。
相当真面目にやらないと本当に現実になってしまうほど自体は深刻です。
3. 温暖化対策の国際的動き(UNFCCなど)
京都議定書もパリ協定も、現実あまり対策が進んでおらず、
今後、子供や孫の世代に影響が出てくることは明らかになってしまっています。
IPCCの次回レポート報告は2022年。
これを読んでからパリ協定の主要規定が改めて出されるのではないかと期待されていますが、今はまだわからない状況です。
技術・経済・社会・組織での課題を含む
↓
期待される技術
・CCS(炭酸ガス捕捉・貯蔵)
・BCCS(バイオマスエネルギー含む)
・大規模植林
⇒実現には困難が予見される
高いレベルの削減でも、経済成長への影響は大きい
☆☆☆今のまま二酸化炭素を出し続けると、30年後、2℃の上昇はすぐ。
相当真面目にやらないと本当に現実になってしまうほど自体は深刻です。
3. 温暖化対策の国際的動き(UNFCCなど)
京都議定書もパリ協定も、現実あまり対策が進んでおらず、
今後、子供や孫の世代に影響が出てくることは明らかになってしまっています。
IPCCの次回レポート報告は2022年。
これを読んでからパリ協定の主要規定が改めて出されるのではないかと期待されていますが、今はまだわからない状況です。
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感想
京都議定書の頃、日本で環境問題対策についても機運が高まったのを私も
よく覚えています。「クールビズ」という言葉が普及したのも確かこの頃ですし、他にも「チームマイナス○%」とかペットボトルのリサイクルを呼びかけるCMが流れたり、省エネ家電買い替え促進が政府主導で進められたり。
しかしここのところ、経済対策や消費優先になってしまったのか、日本のメディア、特にテレビで環境問題自体語られることがほぼないように感じます。
平石先生曰く、「京都議定書の頃の日本はよかったが、今は国際的に「環境先進国としていい顔ができなくなっている」とのことで、少し前までは、環境問題にすごく力を入れている政治家もいたが今は二足のわらじが多いとか。そしてとても片手間で片付けられる問題でもない、とも。
講座終了後、受講の方から「私たちがいますぐできるような具体的な対策は?電気をこまめに消すこと?自動車に乗らないこと?」と質問が上がった時平石先生は「何らかの行動を起こすことはもちろん素晴らしいが、一番はなるべく多くの人にこの問題への意識を広げること」
ということでした。
よく覚えています。「クールビズ」という言葉が普及したのも確かこの頃ですし、他にも「チームマイナス○%」とかペットボトルのリサイクルを呼びかけるCMが流れたり、省エネ家電買い替え促進が政府主導で進められたり。
しかしここのところ、経済対策や消費優先になってしまったのか、日本のメディア、特にテレビで環境問題自体語られることがほぼないように感じます。
平石先生曰く、「京都議定書の頃の日本はよかったが、今は国際的に「環境先進国としていい顔ができなくなっている」とのことで、少し前までは、環境問題にすごく力を入れている政治家もいたが今は二足のわらじが多いとか。そしてとても片手間で片付けられる問題でもない、とも。
講座終了後、受講の方から「私たちがいますぐできるような具体的な対策は?電気をこまめに消すこと?自動車に乗らないこと?」と質問が上がった時平石先生は「何らかの行動を起こすことはもちろん素晴らしいが、一番はなるべく多くの人にこの問題への意識を広げること」
ということでした。
平石先生は、青山の国連大学や外務省などで定期的に講師をなさっているのでご興味を持たれた方はチェックしてみてください。
Web上でインタビューも見つけましたのでリンクしておきます!
▼日本UNEP協会インタビュー記事
https://j-unep.jp/interview3.html
▼E-alert Interviews 第8回 (February 2008)
環境と開発の両立を目指して
https://www.iges.or.jp/jp/archive/interviews/008.html
本日もありがとうございました。